2015年03月29日
和歌山駅-和歌山市駅 他社線乗り入れの検討
これまでの間、和歌山県議会で何度か議論の俎上に上がった、南海線のJR和歌山駅への延伸、貴志川線などの南海和歌山市駅への直通について、和歌山県は関係鉄道会社等と連携した勉強会を設置することを明らかにしました。
この件、実現に向けては多くの課題があります。双方の事情に詳しい鉄道ファンなら概ね理解いただいていると思いますが、できるだけかみ砕いてみます。細かいディティールはこの際考えないことにします。
●南海和歌山市駅の構造
1番線はなく、2番線をJR紀勢本線・和歌山ゆき、3番線を加太線・加太ゆき、4~6番線は南海線・なんば方面、和歌山港線・和歌山港ゆきが利用。
●JR和歌山駅の構造
1番線~3番線は阪和線・天王寺方面、4・5番線はきのくに線・御坊方面、6番線はなく、7番線を和歌山線・粉河方面、8番線を紀勢本線・和歌山市ゆき、9番線をわかやま電鉄貴志川線が利用。
●和歌山市-和歌山間の線路について
和歌山市駅-和歌山駅間は、JR紀勢本線が通っています。紀和駅付近は高架になっており、終日2両編成の列車が往復しています。この路線を介して、南海線・加太線の電車を和歌山駅に、貴志川線の電車を和歌山市駅に、それぞれ直通させる案が存在しています。
さてこの区間、第二阪和国道和歌山北バイパスの建設工事に伴って紀和駅付近が高架になりましたが、紀和駅は2両編成までしか対応できません。かつては和歌山市駅からきのくに線直通の4両編成の電車なども出入りしていたようですが、現在は2両までです。
また、紀和駅は単線構造で電車の行き違いはできません。和歌山市-和歌山間は約6分かかり、ここに和歌山市駅・和歌山駅での列車の折り返しにかかる時間をギリギリまで削って2分と想定しますと、市駅発(6分)和歌山着・折り返し(2分)・和歌山発(6分)市駅着・折り返し(2分)・市駅発・・・と最低でも16分以上の間隔でないと運行することができません。ピストン運転ではなく、同じ方向に続けて発車すれば運転間隔はさらに詰められますが、その間は逆方向からの電車が一切発車できません。和歌山市駅か和歌山駅に電車が到着すると同時に別のホームから反対方向に電車を発車させても運転間隔を詰めることができますが、今度はホームの数が問題になります。
さらに、紀和駅から和歌山駅に向かう線路は途中でJR和歌山線、また和歌山駅の車庫に出入りする線路と共用します。したがって、運転間隔を詰めれば詰めるほど、他の電車のダイヤに影響が出やすくなります。
また南海線・加太線の電車がJR紀勢本線に乗り入れようとすると、これまた和歌山市駅で一旦折り返す必要があり、これまた時間がかかるきっかけを生み出します。さらに現在は南海線と紀勢本線の間は線路が電化されていないためそのままでは直通ことができません。
1. 現状では和歌山市-和歌山間は2両編成までしか対応できない(紀和駅を通過するなら別)
2. 列車の運転間隔は16分以上必要、和歌山線等のダイヤとの干渉も懸念材料
3. 南海線・加太線の電車は和歌山市駅で折り返す必要があるり、かつ電化が必要
●貴志川線の和歌山市駅乗り入れについて
貴志川線はもともと南海電鉄でしたので、かつては電車の保守点検や線路の保守に必要な車両を通すため、和歌山駅-和歌山市駅間を利用することはありました。この際通る線路は電化されていません。また和歌山駅では、いったん田中口側に敷かれた渡り線を通って和歌山駅7番線の南側の留置線に入り、折り返す必要があります。
また、現行の9番乗り場をそのまま北に延長すると道路に干渉するため大掛かりな工事が必要になります。貴志川線を通ってきた電車を和歌山駅8番線に直通させるためには線路を敷く必要があります。
1. 貴志川線を和歌山市駅に乗り入れるには和歌山駅の大改造が必要になる
●車両・設備面について
南海線は20m車両4両・6両・8両、17m車両4両の4パターン。加太線は20m車両2両または17m車両2両の2パターン。
JR紀勢本線は20m車両2両、貴志川線は17m車両2両。
先述の通り、紀和駅は2両編成までしか停車できません。それ以上の長さの電車を停車させようとすると、高額の費用をかけて高架ホームの延伸をするか、「ドアカット」とという手法でホームにかかるドアだけ開閉させる必要があります。これが和歌山市駅から南海線を和歌山駅に引き込む際の一番のネックになると思われます。
貴志川線の車両は、和歌山駅の改造さえ済めば和歌山市駅に乗り入れることができるようになりますが、貴志川線には6編成しかなく、大規模な検査などで運転ができない編成も発生しうることから、これ以上本数が増えると車両を増やす必要があります。
逆に、他社の車両は、17m車両2両であれば貴志川線に入ることができますが、20m車両は入ることができません(かつて水害による一部区間運休の際に途中駅まで20m車両が入線した実績がありますので途中までなら大丈夫とみられますが…)。
そして何より3社に共通する課題は電車運行に関する保安装置や列車無線、運行管理システムの運用です。それぞれ別のシステムを持っていることから直通先の保安装置に対応した装備が必要になります。さらにワンマン運転の方法も3社で異なります。これら設備面の対応が一番厄介と思われます。
1. 紀和駅が2両までしか対応できないことをどう考えるか
2. 貴志川線には南海線・JR線の20m車両は入線不可。
3. 乗り入れ先の保安装置、運転システムへの対応が必要。
●売上ベースの問題
南海線・加太線がJR和歌山駅に乗り入れるとすると、市駅-和駅間はともかく、JRとすれば阪和線を利用する乗客がいくらか南海に流れることを覚悟する必要があります。南海側からすると和歌山市駅の位置づけを大きく見直す必要があり、その一定の覚悟も必要になると思われます。貴志川線が南海和歌山市駅に乗り入れることについても列車の増備が必要ですし、和歌山駅での負担が増える懸念があります。
・・・というように、市駅-和駅間を他社の電車が乗り入れるようにするには、かなり高いハードルが待っています。特に市駅・和駅の線路配置やホームの大改造、紀和駅の対応次第では数十億円単位の投資が必要になると思われます。電車の増備には一般に1両1億円以上必要と言われていますし、保安装置の改造にも相当額の投資が必要でしょう。しかも鉄道事業者もプラス作用ばかりではありません。
今後行われるという勉強会でどのような意見が出るのかは今後の議論の推移を見守るしかありませんが、行政・事業者とも、今後数十年を見通した議論になることを祈るだけではなく、いずれ税金を投入することになった場合は有権者としてどのような選択をするかも検討する必要が出てくるでしょう。
※ 道路関連予算の1%でも公共交通活性化に回せば相当な部分まかなえる部分はあるとは思うのですが・・・
この件、実現に向けては多くの課題があります。双方の事情に詳しい鉄道ファンなら概ね理解いただいていると思いますが、できるだけかみ砕いてみます。細かいディティールはこの際考えないことにします。
●南海和歌山市駅の構造
1番線はなく、2番線をJR紀勢本線・和歌山ゆき、3番線を加太線・加太ゆき、4~6番線は南海線・なんば方面、和歌山港線・和歌山港ゆきが利用。
●JR和歌山駅の構造
1番線~3番線は阪和線・天王寺方面、4・5番線はきのくに線・御坊方面、6番線はなく、7番線を和歌山線・粉河方面、8番線を紀勢本線・和歌山市ゆき、9番線をわかやま電鉄貴志川線が利用。
●和歌山市-和歌山間の線路について
和歌山市駅-和歌山駅間は、JR紀勢本線が通っています。紀和駅付近は高架になっており、終日2両編成の列車が往復しています。この路線を介して、南海線・加太線の電車を和歌山駅に、貴志川線の電車を和歌山市駅に、それぞれ直通させる案が存在しています。
さてこの区間、第二阪和国道和歌山北バイパスの建設工事に伴って紀和駅付近が高架になりましたが、紀和駅は2両編成までしか対応できません。かつては和歌山市駅からきのくに線直通の4両編成の電車なども出入りしていたようですが、現在は2両までです。
また、紀和駅は単線構造で電車の行き違いはできません。和歌山市-和歌山間は約6分かかり、ここに和歌山市駅・和歌山駅での列車の折り返しにかかる時間をギリギリまで削って2分と想定しますと、市駅発(6分)和歌山着・折り返し(2分)・和歌山発(6分)市駅着・折り返し(2分)・市駅発・・・と最低でも16分以上の間隔でないと運行することができません。ピストン運転ではなく、同じ方向に続けて発車すれば運転間隔はさらに詰められますが、その間は逆方向からの電車が一切発車できません。和歌山市駅か和歌山駅に電車が到着すると同時に別のホームから反対方向に電車を発車させても運転間隔を詰めることができますが、今度はホームの数が問題になります。
さらに、紀和駅から和歌山駅に向かう線路は途中でJR和歌山線、また和歌山駅の車庫に出入りする線路と共用します。したがって、運転間隔を詰めれば詰めるほど、他の電車のダイヤに影響が出やすくなります。
また南海線・加太線の電車がJR紀勢本線に乗り入れようとすると、これまた和歌山市駅で一旦折り返す必要があり、これまた時間がかかるきっかけを生み出します。さらに現在は南海線と紀勢本線の間は線路が電化されていないためそのままでは直通ことができません。
1. 現状では和歌山市-和歌山間は2両編成までしか対応できない(紀和駅を通過するなら別)
2. 列車の運転間隔は16分以上必要、和歌山線等のダイヤとの干渉も懸念材料
3. 南海線・加太線の電車は和歌山市駅で折り返す必要があるり、かつ電化が必要
●貴志川線の和歌山市駅乗り入れについて
貴志川線はもともと南海電鉄でしたので、かつては電車の保守点検や線路の保守に必要な車両を通すため、和歌山駅-和歌山市駅間を利用することはありました。この際通る線路は電化されていません。また和歌山駅では、いったん田中口側に敷かれた渡り線を通って和歌山駅7番線の南側の留置線に入り、折り返す必要があります。
また、現行の9番乗り場をそのまま北に延長すると道路に干渉するため大掛かりな工事が必要になります。貴志川線を通ってきた電車を和歌山駅8番線に直通させるためには線路を敷く必要があります。
1. 貴志川線を和歌山市駅に乗り入れるには和歌山駅の大改造が必要になる
●車両・設備面について
南海線は20m車両4両・6両・8両、17m車両4両の4パターン。加太線は20m車両2両または17m車両2両の2パターン。
JR紀勢本線は20m車両2両、貴志川線は17m車両2両。
先述の通り、紀和駅は2両編成までしか停車できません。それ以上の長さの電車を停車させようとすると、高額の費用をかけて高架ホームの延伸をするか、「ドアカット」とという手法でホームにかかるドアだけ開閉させる必要があります。これが和歌山市駅から南海線を和歌山駅に引き込む際の一番のネックになると思われます。
貴志川線の車両は、和歌山駅の改造さえ済めば和歌山市駅に乗り入れることができるようになりますが、貴志川線には6編成しかなく、大規模な検査などで運転ができない編成も発生しうることから、これ以上本数が増えると車両を増やす必要があります。
逆に、他社の車両は、17m車両2両であれば貴志川線に入ることができますが、20m車両は入ることができません(かつて水害による一部区間運休の際に途中駅まで20m車両が入線した実績がありますので途中までなら大丈夫とみられますが…)。
そして何より3社に共通する課題は電車運行に関する保安装置や列車無線、運行管理システムの運用です。それぞれ別のシステムを持っていることから直通先の保安装置に対応した装備が必要になります。さらにワンマン運転の方法も3社で異なります。これら設備面の対応が一番厄介と思われます。
1. 紀和駅が2両までしか対応できないことをどう考えるか
2. 貴志川線には南海線・JR線の20m車両は入線不可。
3. 乗り入れ先の保安装置、運転システムへの対応が必要。
●売上ベースの問題
南海線・加太線がJR和歌山駅に乗り入れるとすると、市駅-和駅間はともかく、JRとすれば阪和線を利用する乗客がいくらか南海に流れることを覚悟する必要があります。南海側からすると和歌山市駅の位置づけを大きく見直す必要があり、その一定の覚悟も必要になると思われます。貴志川線が南海和歌山市駅に乗り入れることについても列車の増備が必要ですし、和歌山駅での負担が増える懸念があります。
・・・というように、市駅-和駅間を他社の電車が乗り入れるようにするには、かなり高いハードルが待っています。特に市駅・和駅の線路配置やホームの大改造、紀和駅の対応次第では数十億円単位の投資が必要になると思われます。電車の増備には一般に1両1億円以上必要と言われていますし、保安装置の改造にも相当額の投資が必要でしょう。しかも鉄道事業者もプラス作用ばかりではありません。
今後行われるという勉強会でどのような意見が出るのかは今後の議論の推移を見守るしかありませんが、行政・事業者とも、今後数十年を見通した議論になることを祈るだけではなく、いずれ税金を投入することになった場合は有権者としてどのような選択をするかも検討する必要が出てくるでしょう。
※ 道路関連予算の1%でも公共交通活性化に回せば相当な部分まかなえる部分はあるとは思うのですが・・・
Posted by わかやま小町 at 00:03│Comments(4)
│和歌山交通ニュース
この記事へのコメント
和歌山駅をハブ駅にする事に大賛成!
サザンを和歌山駅に乗入れて欲しい。県南部から難波や和歌山大学前駅イオンモールへ大変便利になりますし和歌山、大阪南部間の活性化になります。
紀和駅に無理に止める必要もなく和歌山駅ホーム等の改修工事は県が無駄な公共工事を省いてでもするべきです。
サザンを和歌山駅に乗入れて欲しい。県南部から難波や和歌山大学前駅イオンモールへ大変便利になりますし和歌山、大阪南部間の活性化になります。
紀和駅に無理に止める必要もなく和歌山駅ホーム等の改修工事は県が無駄な公共工事を省いてでもするべきです。
Posted by にしあつひろ at 2015年04月13日 11:58
ぼくも和歌山駅と和歌山市駅の間を電車で通る時、不便しています。
和歌山港線・加太線・南海本線⇔貴志川線・和歌山線・きのくに線・阪和線の利便性もあがるので、この計画はぜひ実現してほしいです。
和歌山港線・加太線・南海本線⇔貴志川線・和歌山線・きのくに線・阪和線の利便性もあがるので、この計画はぜひ実現してほしいです。
Posted by 名無し野電車区 at 2015年04月19日 17:40
単に和歌山電鉄が和歌山市まで延伸運転するだけで良いと思います。
2両で十分!!
ただ料金は、他社間でも和歌山市内は通し距離運賃で計算してほしいです。
JR側からイオン行くのに電車の便利さ(特に速さはクルマの混雑に比べて格段に速い!)は計り知れません。
2両で十分!!
ただ料金は、他社間でも和歌山市内は通し距離運賃で計算してほしいです。
JR側からイオン行くのに電車の便利さ(特に速さはクルマの混雑に比べて格段に速い!)は計り知れません。
Posted by 和歌山市活性化 at 2015年04月29日 19:21
JR.和歌山駅の5番線ホームの御坊方面の普通電車を今より南側に停車させて、市駅–和駅間の105系を北側に。
8番線ホームをサザン他南海電車専用ホームってどうでしょう?
とにかく和歌山発展の為にJR西日本様にご協力をお願いしたい限りです。
8番線ホームをサザン他南海電車専用ホームってどうでしょう?
とにかく和歌山発展の為にJR西日本様にご協力をお願いしたい限りです。
Posted by にしあつひろ at 2015年05月02日 13:14
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